Military Modelling Collectors’ Edition Issue 14 “Euro Militaire 2011”

    急激に気温が上がり始めたかと思えば雪が半日ぐらいで全部溶け、西部劇もかくやという程ホコリが飛び回るまでに乾燥してしまったここエドモントン。当然手前の体も影響を受け風邪気味も良い所で御座います。しょうがないのでビタミン剤を二倍量摂取し風邪薬を飲みロキソニンを放り込んで無理矢理抑えるいつもの対処療法。あな恐しや。そんな気分で家に帰って見れば大家さんから「あと数時間は水出ねえべ」と告げられ、しょんぼりしながら大学に撤退し、ツラツラとキーボードを叩いているのが現状、と言うわけでございます。

    それはそれとして、今回は随分と前に購入しておきながら全く完全にレビューを無視していた英Military Modelling誌の、毎年恒例であるユーロミリテール特別号をご紹介。いやはや、この世界最大級のコンペティションに、何をか言うらむ。

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    さて表紙。至ってシンプルならがトップを飾るコレクターエディション、ユーロミリテール2011との文言が光る。実際本屋の棚の中でも一際輝いておりました。表紙左下のSA-6ゲインフルはKristof Pulinckx氏の手による者で、クラス13"Single Military Vehicle Kits"においてHighly Commendedの評価を獲得した物。誌面でもあんまり大きな写真が乗ってないのが残念だけど、パッと見ただけで解る完成度の高さは流石。表紙右のフランス兵二人は2011年度Best of Showを獲得したGustavo Gil氏とAntonio Zapatero氏による”Valeur et Discipline: Borodino 1812”より。この作品の何がスゲェってデジカメで撮られた(であろう)写真を表紙サイズまで引き伸ばしているせいなのか何なのか、全体的に若干ボンヤリとした絵面で載っているんだけど、お陰でどうみても絵画なんだよね。げに恐るべきはそれだけの塗装をやってのけたこの二人のモデラーなんだけど。スゲェなユーロミリテール。

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    目を引かれたのはコレ。George Moschakis氏によるクラス8"Vignettes"エントリー、Bronze獲得の”Banovic Strahinja”。一言で言うなら実にメルヘン。鬱蒼とした森、流れる小川、白馬、騎士、そして姫。メルヘンをメルヘンたらしめる、いわゆるメルヘン-ネスとでも言うべき雰囲気を持つ為に必要とされる物をこれでもかと詰め込んだこの雰囲気の宜しさ。ベースの作りも情報量が凄い。特に小川のすぐ上、地面がゴッソリとかけて木の根が露出してる部分なんかは本当に凄い。土があり木の根がその中を縦横無尽に這い回り、そして川に水を吸わんと突き刺さっている、そんな情景が有り有りと見えるこの素敵さ。白馬の物憂げな表情、姫の安心したような表情、そして騎士の間断なく辺りに警戒を向ける表情といった組み合わせも素敵だし、騎士と姫の手の芝居、これも非常に美しい。全てが噛み合わさって醸し出されるのがこのメルヘン感なのかな、と思ったり。実際どれか一つかけてもいかんのじゃないかしら。

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    個人的に胸像って物が非常に好きなので、数多ある胸像の中から個人的に刺さった物を上げるならコレ。画像にもある通り、クラス11"Painted Military Busts (Up t0 1:4 Scale)Commercial Military Busts"にエントリーされた、Brian Smith氏による"The End – Gumrak Airfield Stalingrad 1943"。1943年、スターリングラード攻防戦において、独軍敗北を決定的にしたグムラク飛行場におけるドイツ兵のバストモデル。これは元々どこのキットだったかなぁ。確かこのボロ布巻いてない、ただ腕組みしてるだけのキットじゃなかったかしら。服装のよれた感じの再現もオドロキだし、このボロ布のボロ布感も何と表現して良いやら。ただそれ以上に見所なのはこの血の色の再現じゃないかと思うんだよね。嘘臭い程赤くない、かといって完全に凝固してしまう程時間が立ってない。時間の経過が透けて見えるこの血の色。どっからどうみても絶望的、そんな戦闘の経過が透けて見えるこの出来は見習いたい。勿論見習えるかどうかは別として。

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    が、それよりも何よりもコレだろう。Best of Show 2011、クラス8”Vignettes”エントリー、Gustavo Gil氏とAntonio Zapatero氏による"Valeur et Discipline Borodino 1812"。目の前に転がる擲弾、ドラムを投げだして怖がる鼓手、怖がりながらも尚次の動作を取らんとする旗手。1812年、ボロディノの戦いにおいて、有り得たかもしれない一瞬を切り取った、恐るべき作品。塗装のクオリティもとんでもないし、表情の違いも見事。旗の文字も全部塗装ならばレイアウトの巧みさ、オブジェクトの目を惹きつける配置も見事。流石、流石はBest of Show、そう言いたくなるだけの何かがある作品であるかと思います。毎年の事だけどユーロミリテールのBest of Showは納得の作品が多いよね。これが伝統と規模に裏打ちされた公平さ、って物なんだろうな、とは思います。

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    上の写真で左上に写っている二人の顔部分をアップで。後ろのドラマーの、何というか慌てた顔、開かれた口と見開いた目が作る混乱した阿形と、旗手の堅く結ばれた口、視線、そして身振りが作りだす、希望を捨てていないだろう吽形。豊かに髭を蓄えたドラマーと、髭の剃り後も青々とした旗手の面構え。見事な対比がこの顔部分だけ見ても鮮烈に描かれている。そしてその表情を取り囲む、ナポレオニックならではの、鮮やかな色見を持った軍服と帽子の塗装の妙。特に帽子の金色の、抑えられながらも主張している金色の色見に注目したい。キッチリ旗手とドラマーで金の色見も違うんだよね。芸コマ。素晴しい。全く素晴しい。これを見た瞬間に、矢張りフィギュアペインティングってのは素敵だな、そう感じられたのが一番の収穫じゃないかしら。

    さて、当然ユーロミリテール特別号なので、目を見張るばかりの超絶作品がズラズラ並ぶのは当たり前。ただ、その中で一際異彩を放ちながら、尚燦然と輝いているのはジュニア部門なんじゃないかな、と思ってならないわけです。

    写真は撮ってないんだけど、例えば6歳のKitty Oram(君?ちゃん?)の作ったピンク色に赤の水玉模様のパンターがBronzeを受賞していたり、恐らくタミヤのソ連兵セットに入っているお姉ちゃんをラッカーか何かでベタ塗りした、10歳のJoe Turner君の作品が矢張りブロンズを受賞していたり。ここに僕ァユーロミリテールっていうコンペティションの間口の広さ、懐の広さ、そして真摯さを見るわけです。

    そりゃあ勿論ね、単純な出来として比較したならば他の、綺羅星の如き作品群とは比較にならない代物なわけですよ。ジュニア部門ってのは。ただ、それでもそれを、他のクラスと同じように審査員が公平に審査し、キッチリと評価し、他のユーロミリテールと同じように、全く同じメダルを授与する。少年少女逹が作った本気で作った作品の価値をしっかりと評価する。これこそが模型コミュニティの、コンペティションのあるべき姿なんじゃないかと思うわけですよ。

    別に特別扱いしているわけじゃないしね。クラス25の参加規定が「16歳まで」ってなってるだけの事で、それを特別扱いしてるって言うのなら、他のクラス全部に文句つけなきゃいけなくなる。結局どんな趣味でも、若い人達、それこそ小学生とか中学生とかで入ってくる事が出来なくなりゃあ、緩慢に死んで行くだけなんだよ。ヒストリカルフィギュアだってそう。模型全般だってそう。高尚な(笑)物になっちまったらおしまいなんだよ。ユーロミリテールのこのスタンスってのは、正にその象徴なんじゃないか、と思うわけさ。

    そんなわけで、毎度の事ながらこのユーロミリテール特別号はオススメで御座います。輸入してでも買うだけの価値があると思うよ。

    じゃあ、今日はここまで。


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